バス特集 高速バスネットワークに新時代「バスタ新宿」オープン 118社が最大1625便発着 インバウンド利用増加

新宿南口交通ターミナル「バスタ新宿」が2016年4月4日にオープンし、国内最大の高速バスターミナルが誕生した。ピーク時には1日最大1625便が発着でき、高速バス(空港連絡バスを含む)と鉄道の乗り継ぎ利便性が大きく向上し、高速バス輸送に明るい展望を切り開いた。高速バスとLCC(低下価格航空会社)を連携させ、爆発的に増加しているインバウンドに多様な移動手段を提供する試みも始まり、バスネットワークの新たな幕開けが始まりつつある。

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新宿駅は都内有数の高速バス発着拠点だが、高速バス・空港連絡バスの乗降場が運行会社ごとに駅周辺に点在し、鉄道やタクシーなどの交通機関相互の乗り換えが不便な状況となっていた。
このため、国土交通省関東地方整備局東京国道事務所同事務所は「新宿駅南口基盤整備事業」として、国道20号(甲州街道)新宿跨線橋の架け替えに合わせて、地下歩道やバスターミナルの整備を進めてきた。
「バスタ新宿」は新宿駅西口周辺に分散していた19カ所の高速バス・空港バス乗降場を南口に集約し、国内最大規模の高速バスターミナルが誕生した。新宿の各鉄道駅と直結し、高速バスと鉄道との乗り換えがスムーズとなり、利便性が大幅に増した。
4階の高速バスターミナルは乗車専用で、大型電光掲示板で案内する発券所と待合室、4エリア(A~Dエリア)12面の乗車ホームが設けられ、118社が39都府県に高速バスを運行している。降車は3階の専用ホームで行っている。ピーク時には1日最大1625便が発着できる。
3階がタクシー乗降場と新宿WEバス(新宿区のコミュニティバス)乗り場、宅配便や手荷物預かりや旅行商品・イベントチケットの販売などを行う東京観光センターが置かれ、佐川急便が宅配センターを開設した。
東京観光センターは訪日外国人観光客の更なる増加に対応し、都内および全国の観光情報を多言語(英語・中国語・韓国語)で提供するとともに、外貨両替にも応じている。
関東地方整備局がまとめた「バスタ新宿」のオープン後1カ月(4月4日~5月3日)の利用状況によると、1日に1153便が発着し、1日平均の利用者は約1万9千人(平均乗車人数17人)で、1カ月で延べ約58万人が利用した。ピークだったゴールデンウイーク期間中の5月3日には1266便が発着し、利用者は約2万9千人にのぼった。
方面別の利用者は

  1. 山梨・長野(204便・3977人)
  2. 富士山(122便・3605人)
  3. 関東(188便・2840人)
  4. 中部(142便・2129人)
  5. 東北(118便・1998人)

が上位だった。
東京国道事務所の高速バス利用者アンケートによると、利用目的は観光・レジャーが38.3%と最も多く、次いで帰省が35.1%と続いた。
JR新宿駅南口に直結したことに82.2%が「満足」と答え、エスカレーターによるバリアフリーや乗り換えの良さと、待合所による悪天候時の乗り継ぎの評価が高かった。
バスタ新宿はインバウンドの利用も多く、富士河口湖観光総合案内所の4月の外国人利用者数は約2万3千人と前年同月に比べて1.4倍に増えたという。
発車便はバスタ新宿への移行が完了したが、到着便は480便が新宿駅西口周辺に残されており、7月までに順次移行し、お盆時期には1625便の発着が見込まれている。

国内観光振興と外国人客拡大へ 情報プラットフォーム構築

観光庁と国土交通省が設置した「国内観光の振興・国際観光の拡大に向けた高速バス・LCC等の利用促進協議会」は3月30日、高速バスとLCCの利用促進の取り組み方針をまとめた。
交通費用の割高感が移動を制約する要因のひとつとなっていることから、比較的安価な交通手段を広く普及させたり、組み合わせることで国内観光を活性化させ、訪日外国人旅行者を地方に誘導したい考えだ。バス業界にとっても、高速バスの利用拡大と増収が期待できる。
同協議会の設置は「観光立国に向けたアクションプログラム」(15年6月5日決定)に盛り込まれていたもので、高速バス関係6社と日本バス協会、LCC(低価格航空会社)5社、国際空港3会社、旅行関係2社がメンバーに入り、昨年12月15日に初会合がもたれた。
15年4月8日に成田空港のLCC専用ターミナル(第3旅客ターミナル)が供用を開始し、今月4日に新宿南口交通ターミナル「バスタ新宿」がオープンした。17年3月には関西国際空港に新LCC専用ターミナルの開業が予定されている。
こうしたインフラ整備も踏まえて、LCCと高速バスを組み合わせるなどして低廉で良質なサービスを提供し、新たな旅行需要の掘り起こしと地域間の交流拡大を目指す。
取り組み方針は

  1. 高速バスと国内線LCCの情報プラットフォームの構築
  2. 外国人観光客や国内旅客向けのイメージプロモーションの実施
  3. 高速バスフリーパスの組成
  4. 「道の駅」や高速道路SA・PAと高速バスの連携

などのメニューを掲げている。
外国語対応の高速バスの情報サイトは、

  • ウィラー・エクスプレスなど48社が参画する「JAPAN BUS LINE」
  • 京王電鉄バスの「Highway―buses.jp」
  • 工房の「JAPAN BUS ONLINE」(発車オ~ライネット)
  • JRバスグループの「Exprssway Bus Net」

などが並立している。
外国人観光客には分かりにくいとの指摘があり、高速バスに関する情報プラットフォームを維持・管理主体を整理した上で、主に外国人観光客向けに情報の入手から外国語での予約・決済まで可能な高速バスサイトへのリンク集を今年度早期に立ち上げる。
高速バスの外国人向けフリーパスは

  • SUNQパス(九州・下関周辺のバス会社など49社)
  • JAPAN BUS PASS(ウィラー・エクスプレス)
  • 昇龍道高速バスきっぷ(11社)
  • 高山・北陸エリア周遊きっぷ(JR西日本・JR東海・濃飛バス・北陸バス・加越能バス)

などが導入している。
これらを参考に、比較的事業者間の連携が比較的容易な回廊型フリーパスの組成を推進するほか、LCCと高速バスの連携パス、複数モード間の企画乗車券なども検討する。
LCCと高速バスの連携では、NAA成田国際空港会社と高速バス会社は4月から「Narita Air&Bus~成田空港から観光地へダイレクト」の新規3路線を開設した。
成田空港LCC専用ターミナルを利用する訪日外国人旅行者をターゲットに、予約・購入は多言語(英・韓・中の3カ国語)対応バス予約サイトで取り扱い、現地との連携による手荷物配送サービス、現地での観光オプション、バス車内に観光に役立つリーフレットなどを用意し、LCCと高速バスを組み合わせて旅行需要を喚起する。

インタビュー 新宿高速バスターミナル 万代 典彦社長 想定以上の安定運用

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「バスタ新宿」は日本バス協会と主要バス会社11社が出資する新宿高速バスターミナル株式会社が管理・運営に当たっている。同社の万代典彦社長(ジェイアールバス関東社長)に、オープン後の運用状況などを聞いた。

オープンから約2カ月、現状は

一言でいうと、ホッとしている。施設の位置づけは道路で、道路事業としてターミナルを建設し、高速バスに独占的に利用させる初めてのケースであり、前例がない。
日本最大規模のバスターミナルができ、118社が乗り入れ、運営スタイルもオペレーションも前例がない。バスターミナルには約500人が出入りしているが、バスの乗り入れの訓練は実質6日間しかなかった。各社がビデオを作り、乗務員の訓練に使った。バスターミナル会社には120人に出向で来てもらっているが、4月3日までは各社のバスターミナルで働いていて、開業当日が初対面の社員がいっぱいいた。案内する人も誘導する人も会社名やバスの色も分からないまま、机上シミュレーションで出発したが、想定以上に安定して運用できている。
開業当初はマスコミに大きく取り上げられたこともあって見物客も多く、すごい人だった。最初のピークのゴールデンウイークは相当緊張したが、何とか乗り切れた。ゴールデンウイークも安定した状態で運用できて、ホッとしている。

最繁忙期の8月がヤマ場 新宿周辺の容量拡大必要

当面の予定は

最大1625便といっても、すべて受け入れているわけではない。混乱を避けるために、到着便を段階的に受け入れている。開業当初に一部が乗り入れ、第2弾として連休明けの5月9日に京王バスのバスターミナルから到着便がすべてバスタに移り、1400便体制になった。
最大の難関は夜行高速バス、いわゆる旧ツアーバスのグループが7月1日をめどに全部乗り入れる。最も多い夜行高速バスの到着は朝6~9時がピークとなるので、朝の甲州街道が混雑しないか、いま一番心配している。そこを乗り切って、次は最大の繁忙期である夏期輸送を迎える。乗車率も上がり、お客さまも増える。最大の1625便体制で本番を迎える8月を乗り切ったら、開業がうまくいったと胸を張れる。

新規乗り入れなど今後の課題

新規乗り入れのルールをどうするかもあるが、ただでさえ容量が足りない。新規に入りたいといっても、各社が一番ほしい時間帯にはまったく余裕がない。新規をどうするかという前に、ここの能力をどう上げていくかが先の課題だと思っている。ない袖は振れない。
空港の発着枠ではないが、当然、既得権があるとかないとかの議論が必ず出てくる。そういう意味では、新宿駅周辺を含めた発着能力をどう上げていくか。特に高速バスの認知度がここまで広がってきて、バスタの容量が足りないのは誰もが分かっている。現在は10分間隔で発着していて、これを縮めるのはなかなか難しい。
インバウンドが急速に増えて、インバウンドを乗せた貸切バスが街中にあふれ、新たな問題が出てきている。しかし、一般の人には高速バスなのか、貸切バスなのか、区別がつかない。それをどう制御するかは観光立国日本の大きな課題だと思う。
バスタは乗り継ぎのハブ機能としても有効だと思う。リムジンバスは成田空港だけだが、20分間隔で発着している。LCCとの関係でも受け入れ先は新宿と東京となる。ここで乗り換えて地方に行く、あるいは鉄道に乗り換えるハブ機能としては十分期待できる。しかし、成田空港との関係でも輸送量が足りず、運びきれない。だから、本当に落ち着くのは周辺問題が解決してからだろう。現行の輸送形態が前提ならば、夏期輸送を乗り切れば何とかなるが、それが新宿駅周辺の高速バス問題の解決だとは思っていない。
観光立国、インバウンド、高速バスの発着容量の問題は新宿駅周辺部に何らかの機能が認知される必要がある。それをどういう場所に、どういうルールとスキームでやるのかを関係行政機関が調整しないと解決しない。それがないと、これ以上の発展はないと私は思っている。

[寄稿者情報]
株式会社交通毎日新聞社: 大正13年3月設立。交通毎日新聞の発行のほか自動車専門書・雑誌の発行、団体機関紙などの編集・発行を行う。交通毎日新聞の購読のお問い合わせはこちらから

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