「交通研フォーラム2015」から その2 リコール技術検証業務の実施状況

交通安全環境研究所は2015年11月18~19日、東京・青山の国連大学ウ・タント国際会議場で「フォーラム2015」を開催した。自動車審査部の審査の概要については別記事に記載

はじめに

リコール技術検証部は06年5月の道路運送車両法等の改正に伴い設置され、国土交通省の指示により、同省がユーザーなどから収集した自動車の不具合・事故に関する情報や自動車メーカーなどから得た情報について、リコールに該当する可能性があるか否か、また自動車メーカーなどが同省に届け出たリコールの内容が適切か否かに関して、技術検証を行っている。

加えて、場合により同省の担当官に同行して、事故・火災の現地調査なども実施している。

自動車不具合情報、事故・火災情報の状況

不具合情報の処理状況

自動車の構造・装置に起因する不具合の疑いがあるとして、国土交通省に報告される情報には、ユーザー及びメーカーからの不具合情報のほか、メーカーからの事故・火災情報や他省庁からの情報などがあり、当部ではこれらの情報について予備的な分析作業を行っている。14年度に処理を行った件数は約9300件であり、前年度に比べて6%程度増加した。

事故・火災情報等の装置別及び原因別傾向

自動車メーカー等から報告された自動車の構造・装置に起因した事故・火災情報のうち、装置名及び原因が判明した912件について、装置別・原因別に分析した結果、装置別では原動機と制動装置が事故・火災原因の上位を占めている。

原因別では各装置とも点検・整備が原因となることが多いが、それ以外には原動機や制動装置では特殊な使用状況、保安・灯火装置では社外品・後付け装置の使用が原因となる事例も多く見られる。

全体として、点検・整備や使用状況に関連する要因が6割以上を占めており、これら事故・火災の未然防止のためにはユーザーや整備事業者への注意喚起も重要であることが分かる。

技術検証の実施状況

新規に着手した不具合装置別検証事案数

2010年度から14年度の5年間に新規に着手した検証事数は148件であり、ここ数年は減少傾向から再び増加に転じている。装置別では動力伝達装置の割合が増加した。また、原動機や制動装置の割合は減少しているが、これらの「走れない」「止まれない」といった事象につながる装置は新規検証事案の5割強を占めている。

検証終了事案の不具合原因の傾向

14年度に検証が終了した事案数は154件であり、内訳は乗用車105事案、トラック・バス49事案であった。このうち、不具合の発生原因が確認できなかった2事案を除く152事案について、不具合の原因傾向を検討した。

具体的には、不具合原因を設計、製造、整備、使用条件(運転操作要因や燃料品質、過積載などを含む)に分類し、これらの複合要因とともに、不具合原因の傾向を考察した。

設計・製造の関連している事案が、これらが複合した要因を含めると全体の4分の3以上を占めている。当部ではリコール(設計・製造上の不具合に対する市場措置)の疑いがある不具合について検証に着手しているが、結果として整備上の問題や使用条件が原因であると判断されたものがそれぞれ1割程度存在していることになる。

また、具体的な項目別に見ると、設計要因では性能上の問題(部品、材料の特性把握が不十分など)、製造要因では作業工程上の問題(作業員のミス、製造工程が不適切など)が不具合原因となる事案が多く見受けられた。

技術検証が市場措置等につながった事案

国土交通省によると、14年度のリコール届出件数は355件(前年度比52件増)、対象台数は955万8888台(157万9249台増、いずれも速報値)となり、届出件数、リコール対象台数ともに過去最高となった。

このうち、技術検証がリコール及び改善届出に関連した事案数が15件、その他の市場措置(サービスキャンペーン、保証期間延長、市場への注意喚起)に関連した事案が24件あり、関連するリコール及び改善届出の対象台数は約84万台であった。

以下、主なものについて、原因分類に沿って不具合事例を紹介する。

原因が設計要因であった事案

  1. 雨水がモーター部に浸入し、軸受け固着などが発生(エアコンの外気導入口の構造が不適切)
  2. 自動変速機の制御システムの不具合(電源回路などの設計が不適切)

原因が構造要因であった事案

  1. ベアリング破損によるハンドルの不具合(ステアリングコラムの外側チューブの真円度が不適切)
  2. エンジンルーム内でのはく離・脱落したラバーシールと触媒による出火(製造時におけるラバーシールの取り付けが不適切)

原因が複合要因であった事案

  1. 燃料噴射ポンプからの燃料漏れ(シールの製造及び形状の双方が不適切)
  2. ブレーキ戻り不良に伴うブレーキ引きずり及び出火(中・大型トラック及びバス=使用過程時にブレーキペダルの下部に付着した泥、砂などの異物が定期点検時に放置されることにより発生)

[dfp]

検証実験及び現地車両の実施状況

14年度の実証実験のテーマ数は11件(前年度と同数)であり、衝突被害軽減ブレーキの不要作動にかかわる再現実験、パワーステアリング失陥時の操舵力調査、大・中型車のブレーキペダルにかかわる調査などを実施した。

また、現地車両調査は47件(前年度と同数)実施し、国土交通省担当官に動向して技術検証に必要な資料の収集に努めた。ブレーキの引きずりによる火災事故や新技術・機構を搭載した車両の運転操作に起因する事故などの事例が見られた。

「雪道走行時の不安挙動」につながるおそれがあるタイヤの不適切使用に関する調査

不具合情報や技術検証事案の中には設計・製造以外の要因が原因となる事例も数多く見られるが、この中にはユーザーが適切に使用することで事故を未然に防ぐことができるものもあると考えられる。

14年度においてはこのような観点から、雪道走行時の不安全挙動につながるおそれのある事象に関する調査を国土交通省からの受託調査として実施した。

今回の調査結果を踏まえて、国土交通省では「積雪時の事故を防止するために」として、ユーザーに向けた注意喚起がビデオ放映とともに公表されている。

おわりに

今年6月24日、道路運送車両法及び自動車検査独立行政法人法の一部を改正する法律が公布された。この法律はリコールの実施に必要な報告徴収及び立ち入り検査の対象への装置メーカー等の追加、自動車検査独立行政法人及び当研究所との統合など、リコール技術検証業務に関連する改正項目も多く盛り込まれている。

リコールの迅速化を通じた自動車の使用における安全・安心の確保がこれまで以上に期待されているところであり、当部としても今後とも、技術検証やこれに関連した市場への注意喚起を進め、より安全で環境にやさしい「くるま社会」の実現に貢献していく。

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。