「交通研フォーラム2015」からその1 自動車審査部の審査の概要

交通安全環境研究所は2015年11月18~19日、東京・青山の国連大学ウ・タント国際会議場で「フォーラム2015」を開催した。2日間の講演内容は多岐にわたるが、この中から「自動車審査部における審査の概要」(自動車審査部)、「リコール技術検証業務の実施状況」(リコール技術検証部)、「自動車基準の国際調和活動における交通安全環境研究所の役割と今後の展望」(自動車基準認証国際調和技術支援室)の大要を紹介する。

交通研フォーラム2015

はじめに

自動車を購入する際は、その自動車が安全・環境上の基準に適合していることを運輸支局で行われる検査により確認するこしになっている。この検査を効果的に行うため、自動車及び自動車装置について、生産段階で安全・環境基準に適合していることを確認する型式指定制度が設けられている。

自動車審査部は、この型式制度の業務の一環として、販売が予定されている自動車について、申請により安全・環境基準の適合性の審査をサンプル車により行うわが国唯一の機関である。

審査の目的は安全・環境基準に適合しない自動車が市場に出回ることを防止することにあり、審査の実施にあたっては厳正かつ公正に行う必要があるが、併せて自動車が技術革新の進展が著しく、また国際的な流通を念頭に置いた商品であることに鑑み、合理的に行うことも重要である。

審査を合理的に実施するひとつの取り組みとして、安全・環境基準や国際調和があり、ここでは自動車の国際基準に向けた取り組みに言及しつつ、昨今の自動車審査部の取り組みを概説する。

業務実績

2014年度に自動車審査部が行った審査業務実績については、自動車にあっては新規申請及び変更申請を合わせて3953型式、自動車装置にあっては493型式となっている。

また、メーカーの設計・開発をより円滑に進めるため、審査業務に先立って試験などを行う先行受託試験については、14年度は225件(前年度比78件増)の受託があり、積極的な活用が進んでいる。

よく活用される試験を例示すると、前面衝突時の乗員保護試験、灯火器取付試験、排出ガス・燃料消費率試験、騒音試験、緒元測定試験となる。

さらに、車両等の型式認定相互承認協定(1958年協定)に基づく、日本政府による装置型式指定認可証(E43)発行については、おおむね国内で使用される突入防止装置及び大型後部反射器を除くと、14年度は107件(41件増)と積極的な利用が進んでいる。

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国際基準調和に向けた取り組み

国際基準調和の取り組みについては、1958年協定に基づく国連協定規則(UN規則)及び車両等の世界的協定規則(1998年協定)に基づく世界統一技術規則(GTR規則)が日本の安全・環境基準として採用された場合、基準に基づく試験の詳細な取り扱いを定めた試験規程(TRIAS)を定め、厳正かつ公正な業務を実施している。

昨今の国際基準調和の取り組み状況として、UN規則・GTR規則を直接引用することになったTRIASを念頭に、以下に紹介する。

予防安全関係

ブレーキについて、乗用車及びトラック・バスともに14年度にそれぞれUN規則の直接引用にかかわるTRIASを制定した。15年度上半期までに54件の試験を行うとともに、装置型式指定認可証(E43)が15件発行されている。

大型車を対象とした衝突被害軽減ブレーキ及び車線逸脱警報装置について、13年度にそれぞれUN規則の直接引用にかかわるTRIASを制定し、15年度上半期までにそれぞれ5件及び7件の試験を行った。

かじ取り装置について、14年度にUN規則の直接引用にかかわるTRIASを制定した。15年度上半期までに試験の実績はないが、今後の実用化に向けた動きが見込まれる自動運転ともかかわりのある試験であり、今後の活用が期待される。

電磁両立性について、14年度にUN規則の直接引用にかかわるTRIASを制定し、15年度上半期までに34件の試験を行うとともに、装置型式指定認可証(E43)が9件発行されている。また、自動車試験場において、試験実施のための施設を15年度末までに完成させるべく整備を進めている。

衝突被害軽減関係

歩行者保護について、日本提案の脚部インパクターを取り入れたUN規則の直接引用にかかわるTRIASを14年度に制定した。15年度上半期までの試験実績はないが、取り入れられたインパクターは人体忠実性の良いものであることから、今後の活用が期待される。

水素ガス燃料装置及び水素ガス衝突燃料漏れについて、燃料電池自動車の一層の普及を念頭に、GTR規則の直接引用にかかわるものとしては最初のTRIASを14年度に制定した。15年度上半期までにそれぞれ1件の試験を行っている。水素社会の実現に向けた動きに伴い、今後の活用が期待される。

環境関係

騒音については、二輪車にあっては14年度にUN規則の直接引用にかかわるTRIASを制定し、15年度上半期までに35件の試験を行った。また、四輪車にあっては今年7月の中央環境審議会の答申を踏まえ、UN規則の直接引用にかかわるTRIASを16年度に制定する方向で調整を進めることにしている。

排出ガス・燃費関係については、規制値が関係するUN規則の直接引用は行われていないが、GTR規則における試験走行モードについて、14年度にRMC(世界統一特殊自動車排出ガス試験法における定常試験サイクル)に関するTRIAS、15年度にWHDC(世界統一重量車排出ガス試験法)による移出ガス測定及びWMTC(世界統一二輪車排出ガス試験法)による燃料蒸発ガス測定に関するTRIASをそれぞれ制定した。

また、WLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)にあっては、おおむね検討が終了し、来年にもGTR規則として定められる状況にあることから、今年2月の中央環境審議会の答申などを踏まえ、排出ガス測定にかかわるTRIASを16年度に制定する方向で調整を進めている。

まとめ

国際基準調和活動は認証業務において、新しい基準が活用されることにより、初めてその成果が上がることになる。

自動車審査部では国際調和された保安基準告示の公布を踏まえ、遅滞なくTRIASの制定を行い、新しい基準での試験をより早く、より多く行うことにより、国際基準調和活動の成果がより上がるよう引き続き積極的な取り組みを進めていく。

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