日本バス協会は2016年3月17日、定例理事会を開き、2016年度事業計画・予算を承認した。上杉雅彦会長は冒頭の挨拶で1月15日に発生した軽井沢スキーバス事故に関連して、「安全はすべてに優先する。安全のしっかりした土台があってバスビジネスが成立する。安全はどこまでやっても100点満点はない。スキーバス事故を教訓に安全管理の強化を足元から見直してほしい」と訴えた。
上杉会長は「スキーバス事故が社会的関心を高め、バス業界、とりわけ貸切バスに対する信頼が損なわれた。夜間運行の高速バスやスキーバス中心の貸切バスに大きな影響を与えている」と危惧した。
再発防止策や取るべき方策に前向きの意見をいただいたと謝意を述べ、「2月10日の安全輸送委員会、同17日に緊急の運営委員会を開催して意見を集約し、7日の軽井沢スキーバス事故対策検討委員会に私も出席し、バス協会の対応を説明した」と報告した。
規制緩和との関係に言及し、「平成12(2000)年の行き過ぎた規制緩和が最大の要因」と断じながらも、「16年が経過し、後ろ向きの議論はすべきではない。国民と利用者の信頼回復の議論が最も大事だ。会員の意見を聞きながら進めていく」と表明した。
バス業界全体を巡る最近の情勢に話題を移した上杉会長は「乗合バス、貸切バスとも法改正に支えられて、事業再生の大きなチャンスが訪れている。地域公共交通網形成計画を策定する自治体が増え、地域創生との関連でも地域交通が見直されている。観光振興でもオファーが出ている」と好感し、「このチャンスを見逃すことなく、積極的に取り込んでほしい」と呼び掛けた。
4月4日には新宿バスターミナル(バスタ新宿)がオープンし、「インバウンドを含め、高速バスの使い勝手が良くなる。高速バスをPRしていきたい」と歓迎した。
貸切バスについては「新運賃・料金に移行して実質1年が経過し、成果が出ている。しかし、旅行会社、自治体を含む団体、一般利用者に新制度はまだ浸透していない。努力不足は否めない」と気を引き締め、「PRと広報を強めてほしい」と要請した。
インバウンドへの対応では「供給輸送力不足が報道されているが、そのようなことはない。きちんとした商取引であれば対応できる」との見解を示した。
上杉会長はスキーバス事故に関して、ある国会議員から「外国人観光客が乗った事故だったら、どうなっていたか。大きな影響を受け、日本が外国から厳しく見られていただろう」と言われ、返す言葉がなかったと述べ、「安全はすべてに優先する」と力説した。
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