基本方針素案を公表
市営バスの経営健全化に取り組む大阪市はこのほど、市営バス事業について大阪府市統合本部が策定した「地下鉄事業と完全分離して運営、かつ民営化」に基づき、民営化に向けての目的、意義、課題解決策やスケジュールなどをまとめた「バス事業民営化基本方針」(素案)を公表した。今後素案をもとに議論を経て2013年度の予算上程時期に民営化方針案をまとめるとしている。
大阪市は、市営バスの乗車人員の減少が続く中で経営健全化に取り組んできたが、営業損益では運行140系統ある中で1系統だけが黒字で、現状のままではバス事業を維持できない状況にあると判断。一方で持続可能な輸送サービスを確保するため、橋下徹市長が「民間にできるものは民間に任せ、事業の効率的な実施を図るべく民営化の検討を進める」としてきた。この流れの中で大阪府市統合本部に「バス改革・持続戦略プロジェクトチーム(PT)」を設置し、事業の分析や課題の抽出などを行ってきた。
昨年6月19日の統合本部会議で同PTから最終報告として赤字補填してきた地下鉄事業と分離し、かつ民営化への方向性を示していた。
大阪市営バスは現在、一般会計からの補助を受けて運営しているが、2011年度には43億円の経常赤字で1983年以来29年連続赤字となっている。累積欠損も633億円にのぼっている。このため公営企業として破綻状態にあり、現状のままでは必要なバス路線を維持することは困難となっている。
素案では、今後高齢者人口の増加でバス輸送の社会的ニーズがあると見込まれることを認識したうえで、まずバスの欠損を埋め合わせてきた地下鉄事業と分離。このうえでバスサービスが途切れないよう民間バス事業者に移行する。路線や運行回数、運賃、敬老優待乗車券などを原則として一定期間、譲渡時の水準を継続しながら民間バス事業者のノウハウを活用してサービスの向上を図る。
このとき、大阪市の交通政策部門が譲渡先の民間バス事業者とバス運行にかかる協議体を設置してバスサービスの維持、向上について協議、調整の場を持つこととしている。
民間バス事業者に譲渡する場合の課題として、一括してバス事業を譲渡するか、路線やエリアによる分割譲渡とするかについては、それぞれの長短所を持つため結論を示していない。
今後は素案をもとに大阪市議会で議論を行い、2月に民営化基本方針案を策定。事業性のある路線と地域サービス系路線に分けて考えながら路線の再編、3月にバス事業廃止を議決し、4月に譲渡先バス事業者の公募を経て7月に事業者を選定する。最終的には2014年3月にバス事業を廃止、4月から民間バス事業者による運行開始を見込んでいる。