国土交通省の第10回「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」(山内弘隆委員長=一橋大大学院教授)が2016年6月3日開催され、報告書「安全・安心な貸切バスの運行を実現するための総合的な対策」を取りまとめ、石井啓一国交相に提出した。
中間整理(3月29日)を含め、委員会で審議してきた対策を網羅し、実施時期のめどを工程表に明示した。このうち、事業許可更新制など法的措置が必要な事項は秋の臨時国会に道路運送法改正案を提出する。
報告書は
- 貸切バス事業者、運行管理者等の順守事項の強化(対策事項14項目)
- 法令違反の早期是正、不適格者の排除等(16項目)
- 監査等の実効性向上(6項目)
- 旅行業者、利用者等との関係強化(14項目)
- ハード面の安全対策による事故防止の促進(8項目)
の柱を立て、盛り込まれた対策項目は58項目(一部重複)にのぼる。
ドライブレコーダーによる映像記録の保存と記録を活用した指導・監督の義務化、実務訓練の義務化、運行管理者の選任数(20台ごとに1人、最低2人以上)といった通達や省令改正はスキーシーズンが始まる12月末までに措置する。事業許可の更新制のほか、民間指定機関の負担金徴収、ランドオペレーター規制の導入は道路運送法などの改正を予定している。
事業者団体(バス協会)に関しては、コンサルティング事業を拡充して全会員事業者に対して巡回指導を実施するよう求め、5割弱の加入割合を引き上げ、中小会員の意見集約組織を設けるなどの機能強化を提言した。非会員の巡回指導は民間指定期間を活用する。
同委員会は今後も継続し、
- 工程表に示された具体的な対策の進捗状況の検証
- 実効性の確認とPDCAサイクルによる見直し
- 新たな事故原因が判明した場合の再発防止策
の検討を行う。
山内委員長は石井国交相に報告書を提出したあと会談し、「亡くなられた13人はすべて無限の可能性を秘めた大学生だった。『悲惨な事故を二度と起してはならない』を合言葉に議論した」と振り返った。
報告書の核心は
- 事業者に規制の考え方やルールを認識してもらう
- 国はルール違反を是正し、改まらない場合は退出させる
- バス業界と旅行業界が連携してルールを順守する
―の3点と指摘し、「具体的な方策とスケジュールを示した。可能な限り速やかに実施してほしい」と要請した。
石井国交相は「精力的に議論し、取りまとめていただいた。国交省としても4年前の関越道ツアーバス事故以来、安全対策を強化している過程で今回の事故が起き、重く受け止めている。悲惨な事故を二度と起こさないため、可能なものから実施に移し、安全に万全を期す。私自身がリードして進める」と強い決意で応じた。
会談後、山内委員長は記者団に「国民の関心が高い事故なので、大臣のリーダーシップで実施してほしい。対策のボリュームは多いが、大臣のリーダーシップで事業者の意識にまで及ぶようにしてほしい」と望んだ。
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