はとバス(中村靖社長)は第74期(2015年6月~16年6月)を初年度とする「はとバスグループ10年ビジョン」(2015~24年)を策定した。訪日外国人旅行者の激増や20年東京オリンピック・パラリンピックを好機と捉え、ビジョンの基本理念に「東京観光のリーディングカンパニーとしてアジアの人々を惹(ひ)きつける存在となる」を掲げ、外国人旅行者のはとバス利用人員を23年度には21万人(14年度8万3千人)と2.5倍に増やす意欲的な目標を設定した。
同社としては初の長期計画
ビジョンは東京都の人口も20年には減少に転じると予測される一方、時間やお金を比較的自由に使えるアクティブなシニア層は増大し、邦人客を減らすことなく、新たな顧客層を開拓し獲得していくことが同社グループの大きな課題と明記した。
有利な条件として訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加に着目し、「訪日事業を新たな事業機会」と位置づけ、外国人客受け入れの体制整備と質の高い商品・サービスの提供を打ち出した。
10年後に目指す姿として、東京の魅力を内外に発信し続けてきたパイオニアの実績を引き継ぎ、アジアの人々から「はとバスを利用してみたい」「東京に行ってみたい」と思ってもらえる存在を目指すとの方向性を明確にし、「東京のブランド価値向上に貢献」を自らに課した。
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事業領域は「観光バス」を中核に、現在の「観光船」「ホテル」から、パートナーとの信頼醸成をもとに、観光施設、レストラン、自然・体験などに領域を広げ、観光バスで培った「おもてなしの心」で思い出づくりのお手伝いをし、東京を舞台にした事業を徐々に広げる「東京観光」活性化事業を展開する構想を描いている。
「外国人観光客の獲得がグループ成長のエンジン」と明確に規定し、観光4事業(定期観光、企画旅行、ホテル、観光船)を最大限活用した質の高い商品を迅速に提供できる体制をグループ全体で整備する。
インバウンド市場への対応では、
- 多言語予約センターの設置
- BtoCとBtoBの決済機能付き多言語Webサイトの開設・充実
- アジアマーケットに影響力のあるソーシャルメディアの活用
- 多言語化やピクトグラム(図形案内表示)対応
- 多言語ガイドシステムの充実とWi-Fiの導入
などを盛り込んでいる。
基幹事業は「観光資源に新たな魅力を吹き込み、ストーリーを紡(つむ)ぐ力を強化する」と将来の姿を示し、重点顧客層(アクティブシニア、ファミリー、若い女性)に向けた商品力を強化する。
はとバスグループ全体の23年度の数値目標は売上高243億円(14年度比20%増)、営業利益14億8千万円(209%増)、はとバスの邦人利用人員は112万人(4%増)、外国人利用人員は21万人(253%増)、シンフォニー(観光船)は33万人(11%増)と設定している。
はとバスは18年に創立70周年を迎え、19年には来春着工する東京・港南地区の再開発プロジェクトが完成する。そして、ラグビーの19年ワールドカップ東京大会、20年東京五輪につなげていく。
「はとバスグループ10年ビジョン」は同社としては初の長期計画で、「20年東京五輪後の成長戦略も考えて10年間にした」(中村社長)という。