コミュニティーバス成功のポイントは「安く、待たずに、行きたい場所へ」
全国のバス事業が総じて危機的状況に向かう中、人口密集地のコミュニティーバスの運行台数が伸びている。交通空白地帯の住民の足として自治体がバス事業者に運行を委託するケースがほとんどだが、路線によって利用者の推移が大きく違うようだ。また、バスロケーションシステム(バスロケ)の導入率が高いことも特徴であり、利用者獲得の一助になっていると考えられる。東京都内で多くのコミュニティーバスを運行する日立自動車交通に、コミュニティーバス事業の現状と、バスロケの果たす役割を聞く。
コミュニティーバスは、鉄道や大型の乗合バスが運行していない地域で、住民の足を確保する目的で全国的に急速に導入が進んでおり、住宅地での走行を考慮し、主に小型バスが利用されている。自治体側がバス会社に運行を委託し、事業に必要な費用を補填することで、100円均一の運賃設定が一般的だ。
最近では、地方都市を中心に観光施設を巡る路線も増えており、乗合バスの新しい事業形態として注目を浴びている。
日立自動車交通は、こうしたコミュニティーバス事業にいち早く参入し、台東区の「めぐりん」をはじめ、文京区の「B―ぐる」、北区の「Kバス」、中央区の「江戸バス」など、同事業の拡大に成功した事業者だ。
複数の自治体事業を手掛ける同社が考えるコミュニティーバス事業の成功ポイントは、「運賃が安く、待たない。そして行きたいところに行くかどうかだ」という。
当然の要素にも思えるが、運行ルートを自治体が決定するコミュニティーバスの場合、自治体の施設ばかりを結んだルートもあり、総じて利用者が伸びていないと問題点を指摘。同社の調査の結果、「バスの利用者の半分は目的が病院だ。残りは駅やショッピングセンターなどを目的地にしている。
こうした施設を巡る路線は利用者が伸びており、今後のヒントになるのではないか」と分析している。
また、バスロケも利用者増を図る上で重要なツールとなっているという。
多くの自治体はコミュニティーバス運行事業者を選定する際、利用者の利便性向上と情報開示の観点からバスロケの搭載を必須の条件としている。
同社の自治体の意向で導入したのが始まりだが、「実際に利用していると、バスの位置情報がセンターでも把握できるので様々な問い合わせにも即応でき、利用者サービスの向上につながっている。
徐々にだが、あって当たり前になりつつあるのではないか。バスが時間通りには来ないというイメージを少しでも払拭し、利用者の減少に歯止めをかける意味でバスロケは有効な手段だと思う。
また、アクセスログと乗客数は比例している。時間帯別など、利用者のアクセス状況が分析でき、運行計画に反映できるメリットもある」と手応えを強調する。
しかし、「コミュニティーバスは利用者の平均年齢が高く、なかなか使いこなしてもらっていない」ことも課題として挙げ、「配布している利用ガイドや路線図、バス停などにQRコードを載せているが、読み取った後でバスの系統や自分の位置を入力することができず、『わからない』という電話での問い合わせも多い」ことを明かし、「これからは年配の方が主役なので、高齢者にも使いやすい、見やすいシステムを開発してほしい」と要望した。
もうひとつの課題はコストだが、同社にバスロケを納入しているクラリオンでは、複数のバス事業者が共同でサーバーを活用するASPサービスを提供。
高性能のネットワーク端末とASPサービスを同時に手掛け、コストを下げることで、小規模のコミュニティーバス事業者でも導入でき、利用者にとって役立つ仕組みを全国的に広げるべく取り組んでいく考えを示している。