日・アセアン交通連携 日本の支援協力本格化

国土交通省 BRTに関するセミナーを開催

国土交通省はアセアン地域でのBRT(バス・ラピッド・トランジット=バス専用レーンで定時走行するなど利便性の高いバス交通)の導入を支援する取り組みを本格化させている。1月20日には東南アジアで初めて、ラオス公共事業運輸省と共同で「ビエンチャンにおけるバス改善とBRTに関するセミナー」を開催し、公共事業運輸省は「BRTの導入を最優先に考えたい。日本の協力に感謝し、これからも多くのことを学んでいきたい」と表明した。

国交省は2003年に日・アセアン交通大臣会合で合意した「日・アセアン交通連携」に基づき、省内に外部有識者を交えた「アセアン公共交通研究委員会」を設置し、調査や国内関係者間の意見交換を踏まえて、ラオスの首都ビエンチャンでの官民セミナー開催となった。

アセアンの各都市は急速にモータリゼーションが進み、交通渋滞や大気汚染が深刻化している。問題解決には公共交通機関の整備が有効だが、鉄道系は大量輸送が可能な半面、大規模な初期投資と長期の整備期間を要し、投資を回収する輸送量の見通しが難しい。
BRTは低コスト・短期間で供用でき、中規模程度の交通需要に応じられる。このため、ジャカルタ(インドネシア)は04月4月、バンコク(タイ)は10年5月にBRTの運行を開始し、セブ(フィリピン)は12年の運行開始を目標に計画を進めており、ベトナムはハノイ、ホーチミンなどでの導入を検討している。

日本はこれらのプロジェクトに対して国際協力機構(JICA)を通じて技術支援を行ってきたが、国交省はそれに加えて運行管理などソフト面を重点に協力し、持続可能なバス交通システムを提案していく。

ビエンチャンの人口は約75万人で、鉄道系だと投資規模が大きすぎ、ラオス公共事業運輸省はBRTを核にした公共交通システムを構想している。さらに、JICAがバス車両42台を無償供与し、技術協力プロジェクトで専門家も派遣している。

官民セミナーには、日本側から加賀至国際統括室地域戦略担当大臣官房参事官、松本大樹自動車局国際担当参事官、中村文彦横浜国立大大学院教授、西日本鉄道自動車事業本部の熊井強課長らが出席した。

松本参事官は官民セミナーでのプレゼンテーションで日本の自動車行政を紹介し、車両を導入すれば目的を達成できるわけではなく、安全・環境基準に合致した車両を入れ、登録・管理して警察・防犯当局と情報を共有することがデータベースになること。事故の賠償や自賠責保険、メンテナンスを監視する車検など多面的な取り組みが大前提となることを説明した。
そのうえで、日本のバス行政について、事業許可制、運行管理者制度、街づくりと一体となったバス交通政策の見直しなどを解説した。

加賀参事官は今後の展開について、「ビエンチャンではBRTの実証実験のめどがついた。今後、セミナーの結果を英訳してホームページに掲載するなどして、BRTを東南アジアに紹介し、広げていきたい。技術協力やセミナーを通じてパイプを築き、働きかけていく。国内関係者間の意見交換会も開き、支援のあり方を話し合う」と意気込む。

松本参事官は「バスは地域や都市によって求められるものが多種多様。パッケージでの提案は難しく、オーダーメードで整備するしかない」との見解を示す。「何がネックになっているのかをよく見て、官民のノウハウを提供し、現地にフィットしたバスシステムを作っていきたい」と話し、「ソフトを中心にアドバイスし、コンサルティング的な役割を果たしていく」と強調する。

関連記事一覧

特集記事

TOP