追跡 運送事業の規制見直し 潮目が変化

高速ツアーバス対応まとめ

高速ツアーバス事故をきっかけに、自動車運送事業の規制のあり方全体の見直しがそ上にのぼってきた。当初は運転者が「居眠りをしていた」などと証言したため、過労運転や運転時間が焦点だったが、高速ツアーバスの運行会社、陸援隊への特別監査で28項目もの法令違反(違反点数242点、81点以上で許可取り消し)が判明。あまりの劣化に驚愕(きょうがく)が広がり、現行規制と事後チェックの実効性に疑いの目が向けられ、規制全般のあり方を問う方向に流れが変わってきた。

高速ツアーバス事故の発生を受けて、民主党は5月11日に国土交通部門・厚生労働部門合同会議を開き、「バス等運転業務に係る規制のあり方検討ワーキングチーム(WT)」(座長=松崎哲久衆院議員)を設置し、集中的な検討を開始した。

一方、国土交通省は5月15日に「関越自動車道における高速ツアーバスの事故を踏まえた公共交通の安全対策強化に係る検討チーム」を立ち上げ、夏の行楽シーズンに向けた緊急対策を重点に議論を開始した。
民主党の規制のあり方検討WTには、事務方として国交省自動車局も参加してきたという。

松崎座長は国交省の安全対策強化検討チームのメンバーに名を連ね、第1回会合で「行き過ぎた規制緩和が安全対策に影響を与えているのではないかという問題意識は強く、さかのぼって検討したい」と発言しており、WTでは規制緩和が主要テーマになったものと見られる。
民主党の国交部門・厚労部門合同会議は6月5日、規制のあり方検討WTがまとめた提言「高速ツアーバス問題への対応策について」を了承し、7日の政調役員会で承認を得て政府・国交省に提出。

国交省の安全対策強化検討チームは6月6日に開いた第3回会合で今夏の多客期の緊急対策などをとりまとめ、8日の党国交部門・厚労部門合同会議もこの案を了承。国交省は11日の政務3役会議で決定した「高速ツアーバス等貸切バスの安全規制の強化について」を公表した。

民主党の提言は「短期的対策」と「法改正を含む中長期的の改革が必要なもの」とで構成され、「中長期的の改革」の中で「本合同会議は、今回の事故の直接的な原因であるかどうかにかかわらず、バス事業の抱える諸問題の背景に『ゆきすぎた規制緩和』があることを指摘する」と明記した。

具体的には、安全面でのチェックの実効性を高めるための参入規制のあり方や事業許可の「更新性」などを挙げている。
国交省の「貸切バスの安全規制の強化」も「引き続き検討すべき事項」として、

  • 運行管理者制度の基準の強化
  • 参入規制のあり方の検討
  • 運賃・料金制度のあり方の検討
  • 監査体制の強化

などを列挙した。

中田徹自動車局長は6月度の定例会見で、「どういう場で検討するかはまだ明確に決めていないが、需給調整撤廃により安全上問題のある事業者が参入してきたのであれば、参入規制のあり方は見直さなければならない」との見解を示した。
同時に、「事後チェックと参入規制はパラレルに考えている。新たに参入する人だけ高い安全性を求め、既存の事業者は低い安全レベルでいいとはならない」「貸切バスの車齢規制も、それが本当に安全のために必要であれば、既存の事業者も同じようにしてもらわなければならない」と述べ、参入時の車両規制の強化などは既存事業者にも適用する立場を再確認した。

安全規制の実効性に関連して、「監査の効率が悪いということであれば、プラス面もマイナス面もある更新性も真剣に考えなければならない」と、以前は慎重だった更新性の導入可能性にも言及した。

高速ツアーバスの事故は規制緩和による新規参入の増加と法令無視の事業者の横行に目が向けられがちだったが、既存時業者を含めた自動車運送事業全体の安全確保に潮目が変化してきている。

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