国土交通省は、「バス事業のあり方検討会」「貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループ(WG)」など4つの有識者検討会の報告書と「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」を公表した。第1次「バス事業のあり方検討会」が発足したのは2010年12月24日、昨年4月29日に発生した高速ツアーバス事故をはさんで、2年3カ月余りの審議を経て、高速ツアーバスと高速乗合バス(高速バス)の新高速乗合バス(新高速バス)への一本化、貸切バスの適正化施策などがまとまった。
総務省が「貸切バスの安全確保対策」の勧告(10年9月10日)を国交省に出し、日本バス協会のツアーバス適正化に関する要望などを踏まえ、10年12月24日に第1次「あり方検討会」が発足した。
第1次「あり方検討会」は中間報告(11年6月14日公表)で、運行形態はほとんど同じにもかかわらず、旅行業法に基づき募集型企画旅行商品として提供される高速ツアーバスと、道路運送法の規制を受ける高速バスを折衷した形の「新高速バス事業」を新設し、高速ツアーバス事業者に道路運送法の事業許可を求めるとの方向性を打ち出した。
第1次「あり方検討会」は11年11月9日の第8回検討会から、貸切バスの事業規制のあり方、事後チェックの強化、営業面の規制の見直しなどを審議し、12年4月3日に最終報告書を公表した。
この中で、新高速バスへは2年間で移行するとの工程表を示し、運賃・料金規制は更なる客観的・定量的な検証が必要として、「貸切バス運賃・料金制度等WG」で引き続き議論するとした。
ところが、11年4月29日に関越道で高速ツアーバスが防音壁に衝突し、乗客7人が死亡、38人が重軽傷を負う悲惨な事故が発生した。
この事故を受けて、国交省は▽高速ツアーバス等の過労運転防止のための検討会(12年5月29日)▽貸切バス運賃・料金制度WG(7月25日)▽自動車運送事業者に対する監査のあり方に関する検討会(8月8日)を相次いで立ち上げた。そして、12年10月25日に第2次「バス事業のあり方検討会」を再開し、これらの有識者検討会のいわば“親検討会”に位置づけた。
第2次「あり方検討会」の論点は大きく分けると、新高速バスに移行した後の高速ツアーバスの扱いと、貸切バスの参入規制の強化だった。
第2次「あり方検討会」の報告書は高速ツアーバスについて、「2013年7月末までに道路運送法等に基づく必要な手続きを完了させて新高速乗合バスの制度に移行させた上で、8月以降は高速ツアーバスとしての運行は認めない」と明記した。
第1次報告書が高速ツアーバスのビジネスモデルの一部に優位性を認め、新高速バスへは「移行指導」「環境整備」としていたのに比べ、一歩踏み込んで表現し、日バス協もこの点は「大変大きな成果」と評価している。
貸切参入規制 いぜん〝溝〟
一方、貸切バスの参入規制の強化については、日バス協はすべての問題の背景に規制緩和後の貸切バスの供給過剰があるとの認識から、▽新規許可時の最低車両台数の引き上げ▽車齢規制(5年以内)の復活などを主張した。
だか、第1次報告書は「個々の問題に応じた規制の見直しが直接的かつ効果的と考えられる」と否定的な見解を示し、第2次報告書は「本検討会内で意見の一致を見るに至らなかった」と結論を先送りした。
学識者委員らの「安全性向上との因果関係が必ずしもあきらかではない」といった意見と、バス業界側の主張との溝は埋まらず、「あらためて期限を定めて早急に議論を行い、結論を得る」との表現で今回も幕が引かれた。