国際交通安全学会 開催 自動運転など研究成果報告

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国際交通安全学会(IATSS、武内和彦会長)の研究調査報告会と学会賞贈呈式が2016年4月8日、東京・大手町の経団連会館で行われた。

国際交通安全学会 開催
武内会長の開会の挨拶の後、研究調査報告会、学会賞贈呈式があり、贈呈式には金髙雅仁警察庁長官と和田昭夫内閣府官房審議官が来賓として出席。今年度からスタートした国の「第10次交通安全基本計画」に盛り込まれた年間交通死者数(24時間死者数)を2020年までに2500人以下にするなどの目標を紹介し、「交通事故のない社会を目指して官民上げて取り組んでいきましょう」などと呼び掛けた。
研究調査報告会では「こどもの交通モビリティと交通安全教育―適用制度の展開および拡張の可能性に着目した学際的研究」「睡眠呼吸障害早期発見・早期治療の普及推進を目指した学際的研究」「自動車の自動化運転―その許容性を巡る学際的研究」「香川研究―事故発生要因の分析と対策への提言」の4テーマについて会員らで組織するプロジェクトチームが研究成果を報告した。
このうち自動運転をテーマに報告したのが、今井猛嘉法政大学法科大学院教授をプロジェクトリーダーに、学会会員の大学教授や警察庁や国土交通省などの関係部署の担当責任者らで組織するチーム。
同チームは現行法制度の下で許容される自動化運転(いわゆるレベル3までの態様)と、期待される利便性や完全自動化運転を実現するための法的課題、自動運転(レベル4)が要請される社会的背景を日本固有の交通事情ないし交通文化に留意しつつ検討してきた。
その結果、レベル3までの自動化運転は日本でも所定の法律を順守することを前提として許容されるが、公道実験を経なければ具体的な問題の確認と検討は困難。レベル4の自動化運転については現在、公道実験を実施している国は存在しないが、英国では今年夏から、この態様の車両も実験に投入されるかもしれず、その動向が極めて注目される。また、米国では「自動運転」が直ちに公道にて実験されるとは思わないが、その前提としての思考実験は活発に展開されつつある。
その中で、例えば「自動運転」を支えるシステムが故障した場合、他車に衝突するなどして自らの保存を図ることが許されるかという難問が提起されているとしている。
今回の研究で他国の比較調査などを通じて日本に固有な交通文化(他の交通関与者への思いやりなど)の意義が再認識され、共存共栄型の慣行の維持・強化、他の交通関与者の被害を最小化した形での自動運転の実用化が望まれる方向性として了解されたと結論付けた。
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学会賞贈呈式

学会賞の贈呈式では、「業績部門」でヤマト運輸・岩手県北自動車の「人流、物流、そして地域活動を効率化する協働」と京都市の「人と公共交通を優先した交通まちづくりへの挑戦」が受賞した。
また「著作部門」では「交通インフラ経営のグローバル競争戦略―国際競争力強化に向けた国家戦略の視座」を著した海上保安庁総務部の中野宏幸参事官と「サインシステム計画学 公共空間と記号の体系」著者の赤瀬達三黎デザイン総合計画研究所代表が賞を受けた。
さらに「論文部門」の学会賞は、平均速度とはねられた歩行者の重症度との関係を分析した前ルンド大学(スウェーデン)研究者のヘスクルドエル・R・G・クレイヤルさんに贈られた。
このうちヤマト運輸と岩手県北自動車は路線バスを利用した宅配便輸送「客貨混載輸送」を2015年6月から開始。「ヒトものバス」とラッピングを施したバスを使用するなどして安定的かつ持続的に混載物量を維持できる設定を編み出したことが高い評価を受けた。
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