運送システムを考える 安全優先の企業風土と運行管理体制確立へ(下)

国交省のまとめによると、11年に運転者の健康状態に起因する事業用自動車事故は143件(うち死亡運転者43人)発生し、前年に比べ43件増加した。
健康起因事故は近年、増加傾向をたどり、07年102件、08年99件、09年111件、10年100件と100件前後で推移していたが、11年は急増し、対策の重要性が増している。
業態別の発生件数は、▽乗合バス37件(前年比6件増)▽貸切バス21件(14件増)▽ハイヤー・タクシー43件(5件増)▽トラック42件(19件増)で、貸切バスとトラックの増加が目立つ。
自動車運送事業者には年1回(深夜業務に常時従事する場合は2回)の健康診断、点呼時に運行管理者による健康状態の把握、疾病や疲労状態にある運転者の乗務禁止などが義務付けられている。しかし、健康診断の受診率はトラックで3割程度とされ、十分行われているとは言えない。そこで、国交省は13年度から「運輸事業振興助成交付金によるトラック運転者の健康診断受診料の助成」を認めることにした。
東京都トラック協会(大髙一夫会長)は今年度から「定期健康診断受診率向上のための実証調査」を開始する。受診率と健康起因事故の発生状況や、受診率向上に向けた対応策の検討を目的に3年間実施し、13年度は2万人(1人1千円)を対象に2千万円の経費を計上した。
ハード面でも、国交省は13年度から先進安全自動車(ASV)プロジェクトでドライバーが運転不能に陥った場合に機能するシステム(ドライバー異常時対応システム)の実用化を目指して、技術的課題の検討に着手する。
ドライバー異常時対応システムはカメラなどでドライバーの表情やまばたきの回数、目の形や車両の挙動をモニタリングし、ドライバーの異常を検出したら、実用化されているASV技術を活用して安全に自動車を自動停止させ、事故を未然に防ぐ。
国交省が総務省や厚生労働省の統計から常用雇用労働者10万人当たりの脳・心臓疾患の労災支給件数を算出したところ、道路貨物運送業は4・73件、道路旅客運送業は2・47件と、全体の0・60件と比べ格段に高かった。健康起因事故の防止は道路交通の安全を確保し、運転者自身を守るためにも重要な課題になっている。

ドラレコ普及へ助成事業 全ト協

全日本トラック協会(星野良三会長)は12年度からドライブレコーダーの導入促進助成事業をスタートさせた。
星野会長は東ト協会長時代に、ドラレコを普及拡大することで、07年から会員事業者の第1当事者死亡事故を半分にする「事故半減3カ年計画」に取り組み、07年の21件から09年は6件と目標を超過達成した。その経験を全国展開し、事故防止に役立てる。
ドラレコを事業者の使用目的に応じて4タイプに分類し、ガイドラインでそれぞれの要件を定め、タイプに応じて額を助成する。今年度の対象機器は①簡易型22社32機種②標準型10社14機種③運行管理連携型19社29機種④スマートフォン活用型1社1機種が選定されている。
助成対象となるドラレコの要件は次の通り。
①簡易型=急ブレーキ時などの映像と簡易的に取得した車両速度情報を活用し、運転指導を行うタイプ
②標準型=急ブレーキ時などの映像と車両速度情報を活用し、運転指導を行うタイプ
③運行管理連携型=急ブレーキ時などの映像と車両速度情報による運転指導に加え、運行管理面やヒヤリハット等の多角的な分析から交通安全教育などを行うタイプ
④スマートフォン活用型=スマートフォン(高機能携帯電話)とアプリケーションの利用により、事務所等に転送した急ブレーキ時などの映像と位置情報を活用し、交通安全教育などを行うタイプ

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