日本政府観光局(JNTO)によると、1~10月の訪日外国人旅行者数は2011万3千人(前年同期比23.3%増)と初めて2千万人を突破した。10月も同月の過去最高を記録し、単月でも7月に次いで2番目に多く、年間では2400万人に達すると予想されている。
従来は団体旅行客が多く、爆買などで貸切バス需要が激増していたが、徐々にFIT(海外個人旅行者)の割合が高まりつつあり、インバウンドの取り込みは掛け声から実行の段階に入っている。
第61回全国バス事業者大会(16日、岩手県花巻市)では原田修吾観光庁参事官による「観光先進国を目指して」、第25回全国レンタカー事業者大会(8日、三重県四日市市)では吉田晶子JNTO理事による「インバウンド観光の現況とレンタカー利用の可能性」と題する講演が企画された。いずれもインバウンドへの関心の高まりを反映したものと言える。
乗合バスの15年度の輸送人員は3年連続増加したが、3大都市圏は3年連続増加、地方部(3大都市圏以外)は2年連続減少と明暗を分け、経常収支率は大都市部は103%と黒字、地方部は88.3%と厳しい経営が続き、大都市と地方部との格差が広がっている。
貸切バスの経常収支率は13年度110%、14年度101%、15年度107%と3年連続で100%を超え、安全コストを織り込んだ新運賃・料金制度に加え、インバウンド需要が追い風になっている。
原田参事官は外国人の旅行消費額に着目し、15年は3兆4771億円となり、自動車部品の輸出額(3兆4830億円)に匹敵する規模に成長したと強調した。
定住人口1人当たりの年間消費額が125万円で、人口が1人減るとその分の消費が失われる。それをカバーするには外国人旅行者は8人分で済み、国内旅行者(宿泊)25人分、同(日帰り)80人分と対比して、インバウンドの経済効果を力説した。
中部ブロックでの交通事業者8社が参画する「昇龍道高速バスきっぷ」や多言語化への補助制度などを紹介し、ハード・ソフト両面からの受け入れ環境整備を要請した。
インバウンドのレンタカー利用(15年度)は、沖縄県が14万3735件(前年度比68.5%増)、北海道が4万1361件(70.6%増)と旺盛で、福岡空港周辺のレンタカー営業所における利用件数(15年)は1万3861件(206.1%増)と激増している。
吉田理事は出国日本人がほぼ横ばいで推移しているのに対して、訪日外国人旅行者はうなぎ登りに増え、15年は両者が逆転したデータを示し、ビザ要件の緩和や多言語化などオールジャパンでの取り組みがその要因と指摘した。
ただ、外国人が訪れる地域は関東が2522万人(37%)、近畿が1592万人(25%)、中部・北陸が740万人(13%)といわゆるゴールデンルートに集中している。
訪日外国人へのアンケートで「訪日で次回したいこと」を聞いたところ、「日本の日常体験」「自然体験ツアー・農漁村体験」「スキー・スノーボード」など体験型のニーズが強いことが読み取れた。
吉田理事は「自分で体験したい人は地方に行く可能性が高い。レンタカーのメリットは地域公共交通がないところでも自由に旅行ができる。レンタカーの役割は大きい」と期待した。
「香港と台湾の人は日本が大好きで、何度も来る。次回は違う楽しみ方をしたいという人も多く、JNTOは香港でドライブ旅行セミナーを開いている。日本はドライブ旅行に適している。安全・安心で、マナーが良く、道路が整備されている。地方に行って、奥深い日本を感じてもらえるようにしてほしい」と地域活性化への貢献を訴えた。
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